借金返済に苦しむ中小企業
松本清張の小説に、「鬼畜」というのがある。中小の町の印刷所の社長が妻に内緒でめかけを囲い、子どもまで作る。しかし工場の火事などによって経営が傾き、借金返済に追われてめかけに渡すお金がなくなる。そしたらそのめかけが家に押しかけて、子どもを押し付けて逃げてしまう。工場のやりくりと借金返済、そして子どもの世話に疲れた社長は、ついに子どもを殺してしまう。
この話を、僕は小説では読んだことがない。映画となった作品と、最近ドラマになったのを観た。いずれも借金返済のための資金繰りが大変そうだが、最近のドラマのほうでは、経営が傾いた理由をIT化によって説明している。
資金繰りに苦しむ社長の会社には、印刷の仕事がなかなか来なくて、借金返済も思うようにならない。なぜ仕事が来ないのかというと、ほかの会社は印刷にパソコンを使うようになって、社長の会社だけが従来の手刷りで印刷しているからだ。客はそんな会社には仕事を頼まないようになり、仕事がないので借金返済のための資金繰りもうまくいかなくなる。
これはIT化による時代の変化にうまく対応できなかった会社の悲劇である。そういう昔ながらの職人気質の会社が取り残され、資金繰りに悩み、借金返済に追われる。一度時代に取り残されると、もう取り返しがつかない。投資しようにも借金返済に追われている状態では、銀行もどこもお金を貸してくれない。
特に中小企業の場合、時代に即した経営をしていかないと、簡単に取り残され、借金返済に追われる立場になる。IT化という時代の流れも、それと無縁ではないのだ。